ゲーム「楽譜で音ゲー」を Unity で作った話
ゲーム「楽譜で音ゲー」のプロトタイプを、Unity で作成しました。→ 追記:その後リリースしました
曲は、簡単な「かえるの歌」と、難しめな「戦闘曲35(魔王魂より)」の2曲です。UnityRoom にアップしたので実際にプレイできます。
「かえるの歌」
- プレイできるページ:https://unityroom.com/games/otogekaeru
- 楽譜:Kaeru sheet music for Piano, Percussion download free in PDF or MIDI
「戦闘曲35(魔王魂より)」
- プレイできるページ:https://unityroom.com/games/otoge-battle35-2
- 楽譜:https://musescore.com/thebiblobiblo/battle35_note
- 音楽:全曲無料・フリー音楽素材/魔王魂より
コード:GitHub - hhyyg/Miso.ScoreOtoge: ♬ Prototype for music rythm game using Unity
これから詰めた実装する段階なのですが、道のりが険しく挫けそうなので、ここで一区切りとしてブログを書くことにしました。
しくみ
まず楽譜を作成し、そこからノーツ(音ゲーで降ってくる玉のこと)を自動生成しています。
楽譜は MuseScore(ミューズスコア)というソフトで作成し、MusicXML 形式のファイルにエクスポートします。そこからノーツの座標を計算し、Unity 上で描画します。MusicXML とは楽譜表記のための XML 形式のフォーマットです。中には、テンポ情報や、どういう音符がどの小節に配置されているか、どの楽器のどのパートが存在するか、といった情報が格納されています。また同時に MuseScore で作成した楽譜から、MP3 形式の音声ファイルもエクスポートし、Unity 上で音楽を再生します。つまりこのゲームは、楽譜である MusicXML ファイル・音声の MP3 ファイルの 2 つから成り立っています。
音ゲーでいつタップするか、というのはこのように打楽器のパートで楽譜に記載します。
↓これが音ゲー上だとこのように描画されます。
コンセプト:「音ゲー+楽譜」
「音ゲーに楽譜を組み合わせたらどうなるのか?」これが気になり作成しました。楽譜を読める自分にとっては、音ゲーをプレイしていて常に感じるのが「これが楽譜だったらクリアも簡単だし、リズムもわかって楽しいのに…」ということです。
「楽譜を組み合わせる」とはどういうことかというと、ノーツ(音ゲーで降ってくる玉)をタップするタイミングを、距離だけではなく、記号(音符)としても表現する、ということです。
例えば、多くの音ゲーのノーツは、以下のように全て同じ丸の図です。
これはデレステの画面のスクショです。ノーツは上から下に流れます。
画像:太鼓の達人 ブルーVer.(ゲームセンター向け) | バンダイナムコエンターテインメント公式サイト これは太鼓の達人の画面です。ノーツは右から左に流れます。
タップのタイミングは、「ノーツとノーツの距離」で音楽を聴きながら予測します。
(ノーツには、他にもフリックする・長押しする という違いがあります。これは「どうアクションするか」という表現で「いつタップするか」という表現ではありませんので、ここでは省きます。音ゲーでは重要な概念ではありますが。)
一方、ノーツを音符で表示した場合は、このようになります。
音ゲーと同じように「ノーツとノーツの距離」でタイミングを表しつつも、ノーツのタイミング(=ノーツ自身がもつ時間の長さ)を「記号(音符)」で表しています。
ビットマップかベクトルの違い
この「距離」と「記号」で表すことは、例えると、画像形式の分類である「ビットマップ」か「ベクトル」の違いに似ています。例えば、「記号」である♩(四分音符)が持つ時間(音価)は、何秒、といったように絶対的な値ではなく、1/4という相対的な値であり、1拍の時間が変わればその四分音符の音価も変わります。対して、音ゲーの「距離」は、見た目では「時間」が測れません。他の距離と比較することにより、時間を推測することができますが、難しいです(音ゲー上では楽しく遊べますが)。
楽譜についての話
なぜ楽譜なのか?というと、先述のように「自分が楽譜を読めるから」にあると思います。例えば、もし私が琴奏者だったら、「琴の楽譜で音ゲーをプレイ」したい、と思っているかもしれません。
今ある音ゲーの譜面も、立派な楽譜であり、現代的な楽譜と言えます。楽譜の再設計についての記事:How I’d Redesign Piano Sheet Music – Alex Couch's portfolio – Mediumに登場する楽譜も、音ゲーに近いものがあります。楽譜にはいろいろな記譜法 - Wikipediaがあり、例えば、琴の楽譜は漢字で縦書き(参照:箏(琴)の楽譜 | 箏-三味線.info)ですし、いわゆる一般的な楽譜は、五線記譜法と言い、西洋音楽に由来します。
今ある音ゲーのデレステの譜面は、攻略サイトなどに掲載されており、次のように表されています。
画像:Trancing Pulse -アイマス デレステ攻略まとめwiki【アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ】 - Gamerch
縦の線が時間軸になっており、この画像では横線も記されています。ゲーム上ではこの横線は表示されていません。ノーツとノーツの距離を横線で区切ることにより、タイミングを分かりやすくしているのです。
「楽譜で音ゲー」は「デレステのゲーム上でもこの横線を表示したい」と同じ感じです。記号を足すために、西洋音楽の楽譜の書式を使用します。
楽譜が最初から存在するということ
音ゲーの譜面は、第三者が譜面に起こしたり、またはシミュレーションできるソフトが開発されていたり、ゆっくり練習するための動画が公開されていたりします。
そうではなく、初めから公式が楽譜を提供するべき、という思いがあります。MuseScore は、楽譜作成ソフトも出していますが、楽譜共有のプラットフォームでもあります。そういった場所を活用したいと考えています。なので、「楽譜で音ゲー」はしくみ上、初めから MuseScore に楽譜があるし、ゆっくり再生も可能、第三者が楽譜を通してノーツを作成することもできます。
レーンが横である理由
今回作成したものは、ノーツは右から左に流れる太鼓の達人方式で、タップする場所は下の方にあります。五線譜が横書き、ピアノの鍵盤が横向きなので、それを連想しています。右側をタップすると、一番上のレーンが反応します。これなんですが、プレイしにくいという意見がありますorz(3つのレーンで音の高さに違いが無いからとか)
最近 MuseDash という音ゲーを遊びました。これも太鼓の達人方式なのですが、右側をタップすると上ではなく下のレーンが反応します。このレーンとタッチ場所についてですが、自分としてはピアノの鍵盤と五線譜を表現したいのですが、ゲーム性を優先するべきかもしれません。
(MuseDashのスクショ)
休符の矛盾
この「楽譜で音ゲー」には矛盾が存在します。それは、「ゲームに表示する休符と、ゲームに表示しない休符が存在する」ということです。これにより、音ゲーではなく静止画で見た場合に、リズムの再現が難しくなっています。楽譜なのに…。なぜ表示しない休符があるかというと、音ゲーとしてのゲーム性のために、直感的に表示/非表示にしています。まだルールが存在しないのでバラツキがあります。しかも、表示/非表示を楽譜上ではフェルマータを用いて区別しており、本来の使い方とかけ離れた記譜法になっています。(本当はフェルマータではなく休符にアクセントを付与したかったのですが、MuseScoreが対応していませんでした。仕様的には極稀な使い方なので無理ない。)
楽譜が読めなくても遊べるか?
楽譜が読めなくても、単純に音ゲーとして遊べるゲームを目指しています。ゲーム性を保ちつつ、どこまで楽譜を組み込むことができるか実験しています。
また、この仕組みを利用して「このゲームにより楽譜が読めるようになる」ことは期待しつつも、副産物としての扱う予定です。