書籍「ASP.NET MVC 5 実践プログラミング」感想
目次
- 基本情報
- 読もうと思った理由
- 知りたいと思ったことが載っていたか?
- 対象者について
- 特徴、印象的だったこと
- Java/PHP/Ruby 等の経験者にとって最適な解説本
- 一歩進んだ実装をあっさり風味で
- 嬉しかったこと
1. 基本情報
書籍の基本情報については、こちらのWINGSプロジェクトサイトをどうぞ(目次やレビューがあります。)
- 対象者:
- ASP.NET MVC を初めて学ぶ人(※ 前提として C# 言語の最低限の知識があること)と記されています。
2. 読もうと思った理由
- レビュワーを募集していたから
- ASP.NET MVC 4, 5 についての日本語での情報を知りたかったから
- ASP.NET MVC の和書を読んだのはバージョン 3 が最後だった
- ASP.NET MVC 5 における周辺技術(特に ASP.NET Identity)を知りたかった
3. 知りたいと思ったことが載っていたか?
―ASP.NET Identity の章のインデックス
ASP.NET の認証ライブラリである ASP.NET Identity はサンプルと共に一通り試すことができたので良かったです。昔利用されていた認証ライブラリ ASP.NET Membership の後継として、ログイン/メールによるアカウント認証/リマインダー/ロックアウト等の機能について手順が載っています。ただ、SNS 認証や OWIN の認証 Middleware の働きについて知りたかったのですが、これは少し触れる程度でした。
ASP.NET MVC 4, 5 で更新された内容も、まとめて把握することができました。
4. 対象者について
この書籍の対象者は冒頭で記述した通りですが、読了後に改めて考えてみました。
- Java/PHP/Ruby 等での Web フレームワークの利用経験者
- ASP.NET WebForms での開発されていた方
にとってはベストな本だと思います。
- プログラミング自体初めての方
にとっては、些細な所で躓く所が多々あるかと思います。
「C# 言語の必要最低限」を前提としている他、IDE の操作や Web の基礎知識も必要です。
ただ、この本の最初の部分(導入編)は、ASP.NET MVC の雰囲気を掴むためのチュートリアルみたいなものなので、とりあえず本の通りに試してみるのも良いと思います。(環境設定やインストールの手順も記載されています。)
- ASP.NET MVC をある程度習得されていて、バージョン 4, 5 の情報が欲しい方
にとってはどうでしょう…。
入門書であるため欲しい情報が少量である可能性があります。もしかすると、この後発売される「プログラミングASP.NET MVC 第3版 ASP.NET MVC 5対応版 (マイクロソフト公式解説書)」も検討に入れたほうが良いような気がします。
また別の視点―研修担当側の視点として大変参考になります(もし自分が ASP.NET MVC の勉強会を担当するとしたらこの本を参考にさせて頂きます)。リファレンスとしての表現と、サンプルを交えた説明のバランスが良かったです。
5. 特徴、印象的だったこと
5-1. Java/PHP/Ruby 等の経験者にとって最適な解説本
本の帯にも書かれているように、“他のプラットフォーム開発者が、初めて ASP.NET MVC で開発を行う際”にこの書籍はとても最適であると感じました。
理由は“周辺技術の解説が手厚い”からです。主軸だけでなく周辺の情報も合わせての解説が丁寧で、いわゆる昨今の ASP.NET 界隈を知るための情報が豊富です。
具体的には、ASP.NET MVC 開発の周辺技術―jQuery/認証/Entity Framework/Bootstrap/TypeScript/Ajax技術/単体テスト方法/セキュリティ対策…等の解説があります。「ASP.NET だと Ajax でやるときどうするのが一般的なの?」「単体テストってどうするの?」「JavaScript のあたりはどういう構成にするの?」といった、実際の開発時に挙がるであろう疑問に答えるように、他のプラットフォームからの視点が意識されていると感じました。
5-2. 一歩進んだ実装をあっさり風味で
入門書といえど、フレームワークのカスタマイズに該当するような一歩進んだ実装にも触れています。フレームワークのカスタマイズと言えば、嫌厭しがちで難しい箇所になってしまいそうですが、この書籍ではサンプルと共にあっさり紹介してくれるので、ストレスなく読み進めることができます。あくまで開発の際に役立つ情報―実践的な内容として、ASP.NET MVC の面白いところを解説されています。
具体的に「こんなことまで載せてくれるんだ」と感じた点は以下の項目。
- iTextSharp による PDF 生成
- RSS フィード
- Optgroup付きのドロップダウンリスト生成
- モデルバインダーの自作
- ビューエンジンの自作(XSLT でビューを表す方法)
5-3. 嬉しかったこと
読み進めているときに「おっ!」と嬉しくなったところ。
- Bootstrap によるレスポンシブデザインの解説
CSS フレームワークである Bootstrap は、Visual Studio 2013 の頃からテンプレートに含まれるようになりました。学び始めの頃は Bootstrap も触ることになるのですが、せっかく新しいページを追加しても Bootstrap の適用が上手くいかなかったり、調査に躓いたり、デザインがイマイチ…なことがよくありました。なので、ASP.NET MVC テンプレートにおける Bootstrap の解説は助かります。また、レスポンシブデザインについても触りですが学ぶことができます。
- フィルター属性の図
前々からフィルター属性のクラスダイアグラムを見たいな、と思っていたのですが掲載されていました!この図を見た時は嬉しかったです。
まとめ
一言いうととても読みやすかったです。情報が少なすぎず深すぎず、随所に整理された図と表。新情報も積極的に紹介されているのが印象的でした。ASP.NET MVC を初めて学ぶ方にお勧めするとしたらこの本です。